■VOL・117  モノツクリの歴史   
2006/9

太田川 木工挽きもの 杓子

猛暑のおり・・・

のぼせた頭で、来年に向けての「太田川クラフトフェスタ」の新たな展開を考える今日この頃・・・
生みの苦しみがあるからこそ、新たな価値は創造されるのかもしれまへん!

地元の工芸家と仲が悪いわけでもないのですが、
個人の責任感と、組織の矛盾と、合併直後の地域のシガラミが露呈して、
実行委員会は一旦解散いたしました。


それなのに・・・

全国各地から作家が集まった川森会場の「掌tanagokoro展」は、
売上が切なくても、継続を希望される協力的な工房が多く、次回の規模はチト大きくなります。

世の中、思いどうりにならないのが常で、面白いものですね。


熱帯夜・・・

JAPANの未来を睨む巨漢の陶芸家は、浅い夢を見すぎて睡眠不足・・・
清流太田川&モノツクリをキーワードに、資料を整えつつ、新たな地域交流を画策中!

田舎で開催する意味を再考しながら、流域の歴史をホジクリ返しておりますが、
ワクワクするような新しい発見もあり、知らないほうがいいような歴史の裏側もある。

あまり過去をホジクリ返すと、クウェート情勢も夫婦喧嘩も泥沼化しますので、
中途半端に暮らすのが良いのかもしれまへん!


振り向けば・・・

そこには清流があり、人の暮らしの源流が見え隠れしている・・・
来年の「掌tanagokoro展」会場には、新たな地域交流企画が必要ですので、
浅い夢に終わらせたくはありまへん!



「太田川モノツクリの歴史展」

石器&土器&たたら製鉄&漆器・・・
上流域には、ホジクリ返さないと解らない歴史がある。

寿司鉢&シャモジ&茶器・・・
上流域には、伝統的な木工芸に従事される古老が生存しておられますが、チト無骨な御様子・・・
残念ながら、お話した事がありまへん!

鋳物&針&モノツクリ産業・・・
西中国山地の砂鉄、木材、炭は、川船や筏を利用して下流に運ばれ、
モノツクリの素材となり、広島の産業基盤となる。

一方で、豊かな自然は破壊され、砂鉄採集の残土を大量にタレナガシ、
堆積した河口のデルタ地層のうえに、現在の広島市がある。

壮大なテーマを、掌会場の直径150cmの円卓に展開するのだ!


う〜ん!

石器&土器はペーパー資料とし、
たたら製鉄の資料を、川森会場2Fの民族資料館や、街ぐるみ博物館の鍛冶屋館から拝借し、
明治時代の漆器は、実物を林業総合センターから拝借すればなんとかなりそう・・・

古老の製作される木工品は、
趣意書を作成し、方言を駆使しながら頭を下げ、特別出演として敬意を評し、拝借を願いますが、
地域のシガラミが露呈しますと、難しい展開も予想されます。

鋳物は、スポンサー企業の大和重工様が、以前から歴史的な展示をしてくださっており、
経営者の御理解も深く、業績も好調・・・


う〜ん!

努力すれば、不可能な企画ではない。


山葡萄カゴ 補修 七宝アクセサリー

残暑のおり・・・

盆の帰省ラッシュの高速道に乗って大阪へと走る・・・
なんば高島屋で「74回西から東から私の手作り作品展」が開催されました。

風炎窯は、湾岸戦争が勃発した平成2年に太田川沿いに生まれ、
それ以来の出展ですので、一番、歴史のある催事という事になり、
バブルが弾けた後の変遷を、重ねながら歩んでおります。


話は青森へと移る・・・

「山葡萄カゴ」

手作り展の会場で、隣のブースに出展されてましたので、深い話を伺いました。

山葡萄のカゴは、マスコミに紹介されて、ハイソな婦人達のブームとなっているのですが、
親子孫3代、100年の耐久性を誇り、使い込むほどに独特な飴色を呈し美しい・・・
縄文時代の三内丸山遺跡からの出土品も確認されておりますので、歴史は古いだす!


それがここ数年で絶滅の危機がおとずれている。

山葡萄は30年程度で直径10cmくらいの太さに育ち、
6月中旬からの1ヵ月間に採取するのがベストですが、時期がずれると耐久性に問題が生じる。

山を見つめながら、生育を見守りながら、自然のサイクルが守られていたのですが、
カルチャーブームもあり、アマチュアに乱獲されて、細い蔓まで切られしまい、材料が枯渇・・・
安い中国製品の輸入で、価格破壊・・・

中国製と日本製の見た目の違いはプロにしか解りませんが、
あちらのカゴは、ほどくと皮が薄く、耐久性と、しなやかさに欠ける。


なにわの御婦人が、
別の店で買われた、山葡萄カゴの取っ手が傷んだとかで、修理の依頼がありましたが、
御本人は中国製であることを知りませんでした。

中国には豊富な原料がありますが、採取の時期と、編むための下処理に問題があり、
本来は一週間程度、水に浸して柔らかくすべきものを、短時間で湯に浸している。

日本のブームに乗っかり、お金になればいいという安易さが見え隠れしており、
山葡萄を編むという歴史が希薄であるのも、その要因のひとつかもしれまへん!


ブームが去った頃・・・

山葡萄が100年も持つなんて大ウソだという噂が流れ、山の原料も枯渇・・・
やがて作り手も、その技も、消滅・・・
見直されたとしても、30年以上もの時の流れが必要・・・

その復活を願うしかありまへん!


う〜ん!

モノツクリの現場は、
体験カルチャー教室からのアマチュアの介入と、安価な中国製品の輸入で困った状況になりつつあり、
プロの誠意と誇りが見えにくくなっております。

クラフトイベントも肥大化し、フリマーケット化し、娯楽化するのは致し方ありませんが、
売る以上、より良いもの製作する誠意は必要でがんす!


お知らせ・・・

来年の「太田川クラフトフェスタ VOL・3」に、絶滅の危機である良質の青森の山葡萄カゴと、
兵庫の作家の、縄文のカホリのする七宝アクセサリーが初参加します。

歴史を見つめ、次の時代を見つめ、
モノツクリがその価値を取り戻すためのクラフトイベントなのだ!


たたら製鉄 鍛冶屋館 炭焼き

秋のカホリ・・・

チト涼しくなり、頭の回転が良くなれば・・・
太田川とたたら製鉄の歴史を活用した、グッドアイディアが浮かぶ・・・
学校関係者様へ、体験バスツアーのご提案!


「モノノケ探しの太田川ツーリズム」

「もののけ姫」は、宮崎駿氏のベストセラーアニメですが、
中世の中国地方の「たたら製鉄」を題材としており、裏テーマは自然との共生である。

一般の方々にはかなり認知されておりますので、
太田川の歴史に、「もののけ姫」を絡めますと、
県内の中高校の、歴史&平和の体験授業には、インパクトがあるテーマとなる。


モノノケ探しの旅にようこそ!

中国道、戸河内ICからR191を、太田川に沿って下流に向かう。

午前中、安芸太田町加計周辺・・・
温井ダム・水の資料館・民族資料館、鍛冶屋館、井仁の棚田・・・
たたら製鉄の歴史と、広島デルタの形成過程と、灌漑の歴史を知る。

 ※ダムの役目は何か?
 ※たたら製鉄は何処から来たか?
 ※たたら製鉄と神楽の関係は?
 ※何故ある時期、急速に広島デルタが堆積したのか?
 ※現在の鍛冶屋の仕事ぶりは?
 ※棚田の石垣ツクリの技術とは?


昼、北広島町豊平周辺・・・
どんぐり村公園・たたら製鉄復元遺跡・炭焼き窯・・・
たたら製鉄の知識を深め、周りの風景を眺める。

 ※鉄を作るのに、真砂土と森林の量はどれくらい必要か?
 ※日本独自に発展した炉の構造は?
 ※何故、和鉄は消えたか?


カーブの多い川沿いの道をバスが走る・・・

上流では清流を見つめながら、田舎のありふれた自然を体感し、
下流へと移り変わる風景を見つめながら、都市や産業の成立過程を体感し、
モノツクリの歴史と、水運の歴史を再認識できる旅・・・
鋳物作りの観光体験などあればこの上ありません。


午後、広島市安佐北区周辺・・・
川辺の鋳物工場・針工場・放水路・・・
現代のモノツクリ産業の工場見学と、灌漑の歴史を学ぶ。

 ※創業は何時ごろか?
 ※何故、川沿いに工場があるのか?
 ※戦時中には何を作っていたか?
 ※産業の活力の根源は何か?
 ※放水路の役目は何か?


後日、教室でお勉強・・・

子供の興味を引く素材として「もののけ姫」を利用する。

たたら製鉄は、山を壊しながらも、灌漑の進歩に貢献した一方、鎧や刀の武器となる。

棚田は公共工事の原点のようでもあり、
戦時中の古いダムは、水力発電の軍事目的があり、
最先端の温井ダムも、洪水対策の反面、水質を悪化させる要因がある。

広島のモノツクリ技術の結晶ともいえる戦艦大和も、悲しい歴史があり、そして原爆投下・・・
先端科学の原子力が爆弾となる。

平和&体験教育が盛んな御時勢であり、
太田川&モノノケをコンセプトとした、歴史探検ツーリズムとして成立する気がします。


う〜ん!

身近な風景から歴史をさぐり、真実を見つめ、時間を繋げ、
未来を見つめるイメージ力を養うことは、年号を暗記するよりも、はるかに実のある歴史教育でがんす!

企画書としてはお粗末ですが、内容が濃いと自画自賛しており、
カタチにするのは大変な作業ですが、元気ハツラツな教員か、旅行社の参考になれば幸いです。

モノノケ探しの旅にようこそ!


PS

歴史に学び、JAPANの未来を見つめ、クラフトの存在意義を重ねれば、
現代のモノツクリの価値は、お金や地位にすり返られてしまい、
何かを見失っているようでもある。

資本主義の株式や為替は難解で、ネットに乗ってマネーが飛べばワケワカラン・・・
生命保険は不慮の災難を、相互に助け合うものですが、オプションや銭にまみれてワケワカラン・・・
年金という名のマルチ商法も、国がやれば、責任者がおらん!


確かに、物々交換に比べれば、お金は便利な道具なのですが、
見えない何かに振り回されれば、社会不安の原因となり、
非効率な工芸を生業としているクラフトマンにとっては、生きにくい時代が到来したと言わざるおえまへん!


う〜ん!

歴史の真実と、モノツクリのボヤキは、ホドホドに・・・・






 Back      Top