■VOL・115 陶器まつり 2006/5
春爛漫!
うららかな陽気に誘われて、風炎ワゴンで、九州への旅を決行・・・
陶磁器の産地が多く、陶器祭りがあちこちで開催されており、裏事情の視察・・・
人並みにゴールデンウィークに旅行するのは始めての経験でがんす!
3日の朝、工房を出発して午後には長崎県の「波佐見陶器まつり」を見学の予定でしたが、
高速道路が山口で30km、福岡で20kmの大渋滞・・・
民族大移動の長時間の運転は、腰に負担で、ブチクソ苦痛・・・
通勤ラッシュのない我が身を振返えりながら、カーステレオを聞きまくる・・・
長崎県波佐見の会場には夕方着になってしまいました。
「波佐見陶器まつり」
人出の多さと、値段の安さにオドロキながら、片付けの時間帯の見学となってしまいました。
やきもの公園広場が会場となり、中央に大テントが張られ、
地場の量産陶磁器の販売業者が中心となった会場レイアウトで、
手作り作品もチラホラとありましたが蚊帳の外の感がありました。
業界は不景気の中・・・
量産磁器の産地ですので、価格破壊と在庫処分で、セール品のテンコモリ・・・
よりどり3ヶ1000円、100円均一、50円均一、さらには口頭値引きまで横行・・・
なんと、ビニール袋に詰め放題で1000円・・・
人出も多く大混雑なのですが、、商いとしては苦戦している印象・・・
販売業者のセールストークは、安さの押し売りばかりで、製品の特徴や良さなり、前向きな説明は無い・・・
量産品は単なる商品であり、愛が見えない売り方をされれば、切ない光景が広がる。
店員の表情や、ヒソヒソ話から察するに、かなり厳しい状況が感じられました。
「波佐見陶磁器工業共同組合」
品の良いギャラリーで、青年部の企画展がされており、
使い易そうなカレー&パスタ皿が展示されておりました。
スプーン&フォークの置場、すくい易い角度、レンジ対応、収納性・・・
均一で合理的なデザインの磁器皿に、21窯元の特徴のある絵付けが施された、
バラエティー溢れる商品企画は、量産産地ならではのものでありました。
う〜ん!
手作り陶器の場合、手作り特有のアイマイさがあるのは事実であり、
大きさの誤差、焼きムラ、その時の気分で同じモノは出来ない・・・
焼いてみないと解らないのが宿命であり、
均一性&機能性の追及は、苦手な分野であり、チト反省させられました。
その夜は、嬉野温泉の湯船に浸かり、隣町の有田の駐車場で、車中泊をしました。
「有田陶器市」
GW期間中の来場者が120万人もあるという、国内でも屈指のイベントで、こちらはさらなる大盛況でがんす!
JR有田駅から上有田駅まで、
約5kmの商店街の陶器店、民家の軒先や駐車場や空地、裏路地や橋の上までも・・・
陶器店や陶芸家、木工、ガラス、飲食の仮設店舗が、雑多と600軒も並ぶ・・・
丸一日、歩き回りました。
全国から集まった仲買業者は、バーゲン価格で、セールストークも安さのアッピ〜ルばかり・・・
定価販売の作家もいるにはいるのですが、ほとんどの場合2〜3割引きで販売しており、
手作り&手描きをアッピ〜ルする作家達は、全体の雰囲気に呑まれて勢いがない・・・
こちらも、人出の割には、買物袋を持たれた御客様は少なく、切ない光景に感じ取れました。
「香蘭社」
江戸時代、陶磁器は先端産業で、佐賀鍋島藩によって統制されており、
長崎出島から、ヨ−ロッパに向けて船積みされる陶磁器は、貴重な輸出品でした。
明治維新、深川栄左ヱ門によって、九州初の法人企業として設立されたのが「香蘭社」で、
「深川製磁」は分家にあたるらしい・・・
レトロな展示室や工場は、歴史を感じさせるもので、陶器市もその頃から始まったものらしい。
製品の質は高く、買う気で品定めしているお客様が多く、老舗のブランド力を感じさせられました。
「器のバイキング」
アウトレット倉庫では、バーゲン販売をされておりましたが、定価が高いのでそれなりの価格・・・
それでも売れているのがブランド力というか、歴史というか、羨ましい光景でがんす!
「バイキングとはど〜ゆ〜事でがんすか?」
「福袋は中身が選べんけんね!」
「陶器は好みがあるけん、せっかくサービスのつもりで詰めても、喜ばれんかったら、切なかけん!」
「2万円分くらい好きなのを自分で選んでもらい、1万円のBOXに詰めあわせるとよ。」
「製品はB級品じゃなかけんね!」
う〜ん!
風炎玉手箱も負けそうでがんす!
有田陶器市は老舗のブランド力&全国の産地からのバッタ屋&手作りの陶芸家・・・
雑多としたカオスのようなイベントであり、一日で回れる規模ではなく、
その切ない光景は、JAPANの陶磁器産業の現状が見え隠れしているようでもある。
知り合いの陶芸家もチラホラ出店されており、裏情報も仕入れましたが、
興味深いのは出店場所の選定と出店料で、
一律のルールはなく、陶器組合への上納金と、各自の借地料らしい。
借地は個人との交渉であり、不動産屋の介入もあるとか・・・
料金は秘密とされておりますが、親戚でもないかぎりブチ高い・・・
ゆえに切なくても風炎窯は、バーゲン販売もしておりませんので、出店のハードルはブチ高い・・・
切ない光景ながらも、将来出店するメリットはあるのか???
う〜ん!
それなりに思案しながら、地元の食堂で有田名物の呉豆腐を食べました。←なめらかな胡麻豆腐といった感じ。
その夜は、何となく佐世保に訪れ、防空壕の穴ぐらの居酒屋で呑んで、サウナに泊まった。
広島の呉をイメ〜ジしておりましたが、結構大きな町で、教会と坂道が印象的・・・
残念ながら、「佐世保バーガー」には、ありつけまへんでした。
悔しい・・・
「小石原民陶むら祭」
小石原は福岡県の南東にあり、博多からも、小倉からも、車で2時間の距離があり、
JRもなく、アクセスは車ですが、期間中はシャトルバスが運行されるとか・・・
幹線道路は大渋滞でした。
地元の陶芸家によれば、それでも年々渋滞は減少しており、動員も減少中とか・・・
中間山地という立地は、広島の安芸太田町と同じで、興味深い点が多いのですが、
これほどの渋滞が起きるのですから、陶器の好きな県民性があるのかもしれません。
小石原焼は無骨な民芸陶器で、飛カンナや刷毛目の技法が主体で、田舎風で素朴な色合い・・・
茶陶は高取が有名・・・
昭和50年代の民芸ブームの頃には、活況を極め、窯元での直売だけで生きてゆけたそうで、
立派な展示場が多いのは、その頃のなごり・・・
新しい技法の研究開発や、他産地との交流は盛んでは無いようで、
道の駅のSHOPでは、陶器がたくさん並んでいるのですが、皆同じような雰囲気で個性は無い。
期間中は、村中どこでも全商品が2割引きで販売されており、
いわゆるヨソモノ、他産地からのイベント参加者はなく、ある意味、閉鎖的な印象を受けました。
道の駅の売店のみが忙しそうで、道端のテント村や、窯元の展示場は切ない光景・・・
陶芸家の工房での密談・・・
民陶むら祭は、補助金と組合費で運営されてるそうで、
組合費が払えない切ない窯元は、イベント期間中は、自ら閉店されている所もあるそうで、
中間山地の、人間関係のシガラミを感じさせるお話を聞きました。
う〜ん!
安芸太田町の旧加計町商店街も、それなりにシガラミがありまして、切ない光景が重なる・・・
ひなびた食堂で、太麺の手打ち蕎麦を食べ、昼間からビールを飲んで、小石原を後にしましたが、
途中の道端でも「窯だし展」をしている窯元がチラホラあり、
福岡はいたるところに窯元があると実感させられました。
う〜ん!
雑踏と渋滞と暑さと酔いで疲れた感じ・・・
「秋月好い陶祭」
秋月は福岡の小京都と呼ばれ、鎌倉時代からの古寺も散在し、キリシタンも隠れていたそうで、
小さいながらも歴史を感じさせる雰囲気があり、新緑に抱かれた癒しの空間・・・
昨年から始まった小さな陶器祭が開催中で、テント&屋内で18の窯元が展示即売がされておりました。
こちらのお楽しみクジは、1000円お買上げで、抽選券が一枚貰え、空クジもあるのですが、
結構、当たりが多く、景品が間に合わない状態でした。
陶芸家自らが実行委員会を作り、手弁当で運営されており、今年で2回目とか・・・
イベント企画とは大変なもので、御苦労されているようでしたが、
自ら運営されている充実感で、目は輝いておられました。
次の時代を予感させる、隠れ家的な、身の丈にあったイベントで、
来場者も混雑するほど多くもなく、癒しの空間が広がる・・・
う〜ん!
6月初旬に始まる、太田川クラフトフェスタも、工芸家による実行委員会の運営で、
各方面からの援助を頂いているのが実情であり、共通点が多い・・・
人に管理されるよりも、
自ら企画すれば、苦しくても充実感はあるのですが、
継続という面では、切ない状況が見え隠れしているようでもある。
振り向けば・・・
今回のゴールデンウィークの旅は、暑さ&雑踏&混雑&渋滞でハードでしたが、
陶芸家による陶器イベントの視察という意味では、切ない光景と現実でした。
観客の立場から客観的に眺めるのは、勉強になりましたし、
切ないながらも次の時代への道標を、今もなお考えております。
大量生産&ブランド&シガラミ&自尊心・・・
資本主義&大量消費&貨幣経済&高齢化・・・
お金なしでは生きてゆけない社会を作ったのは人間であり、
大切な何かを見失っているのかもしれまへん!
う〜ん!
モノツクリだからこそ、アホだからこそ、出来る事があるような気がしてなりまへん!
PS
6月2・3・4日の3日間、広島の太田川上流域の4会場で「太田川クラフトフェスタ」が開催されます。
都会と田舎、交流、癒し・・・
それなりの隠れコンセプトがあるのですが、次の時代をニラムのがメインコンセプトであり、
皆様も心の源流に目を向けて、会場のクラフトマンに御意見をつか〜さい!
愛すれど切なく、切なくも激しく・・・
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