■VOL・106  嘉穂劇場   
2005/5

嘉穂劇場 花道 回転舞台の床下

先日、五木寛之氏の「青春の門」がテレビドラマ化され、放映されましたのでDVD録画しました。

高校時代でしたでしょうか、結構好きな物語でして、
炭坑の街の義理人情と、性への目覚めと、自立と、旅たち・・・
男なら、誰もがくぐる門なのですが、妙に懐かしく、新鮮に映りました。


九州の福岡県で、博多・小倉に次ぐ街、筑豊の飯塚は、炭鉱の町として有名ですが、
ボタ山、閉山跡、炭坑長屋、資料館・・・ 全盛当時のなごりが、今でもアチコチに残っており、
木土藍楽展の本拠地、頴田町の近くですので、度々、訪れております。


市内に、嘉穂劇場という大衆演劇のカホリを残す、貴重な芝居小屋が現存しており、
かつては筑豊で48軒もあったらしいのですが、ここが最後の1軒とか・・・

美空ひばり、三波春夫、北島三郎、森進一、五木ひろし、梅沢登美男、舟木一夫、和田アキコ、ピーター・・・
歌謡ショーや、全国のどさまわりの座長大会や、有名歌舞伎役者の公演がされております。

その道では、結構な有名劇場でがんす!


一昨年前、見学させて頂いたのですが・・・ おおたまげ!

城のような建物で、広くて大きなカラクリ舞台・・・ 提灯や花道・・・
約1500人収容の客席には椅子は無く、ゴザの座敷は竹竿で区切られており、座布団に鎮座!

デッカイ回転舞台も、沢山の緞帳の上げ下ろしも人力手動であり、
舞台袖には沢山の太縄が張り巡らされ、帆船のようでした。

舞台の床下の隠し通路は、まるで坑道のようで、
花道を走る役者達は、立派な肉体労働者である事を、実感させられました。

芝居も、歌も、コンサートも、文学も、報道も、画像も、インターネットも、
ある意味、虚構ですが、仕事の裏側とは興味深いもので、何となく真実を感じてしまうのであります。


筑豊は炭鉱で栄え、北海道と並んで、日本の石炭時代の原動力であり、北九州の製鉄を支えておりました。

好景気に、全国から集まった、流れ者の炭坑夫達は、命がけの危険な重労働だった事でしょうし、
その日銭が、ストレス発散の為、酒や舞台の花(チップ)として、乱れ飛んだんでしょうね!

芸能界や政界や財界・・・ ヤミ世界との癒着は噂されておりますが・・・
石炭から、ガソリンに変わった現在でも・・・
老木の根ッコのように、奥深い歴史があるのかもしれまへん!


大手の財閥は、ヤミの力を借りながら、荒くれ者を統率し、
過酷な炭坑夫達は、流血、犠牲者を出しながらも戦い、労働者の権利を勝ち取りました。

JAPANで始めて、労働組合が誕生したのも、この地と聞いております。

昨今の不景気ですが、労働組合も、ワークシェアリング等で、変革期を迎えており、
これから先は、日本国民の底力、民衆の力が、試される時かもしれまへん。


一昨年の7月19日に、九州北部を襲った集中豪雨で、筑豊の遠賀川は大氾濫し、
嘉穂劇場は1.5mの床上浸水の被害で休業中でしたが、各方面の方々の御努力で復旧されました。

地震災害も多い今日この頃・・・ やはり、窮地を救うのは、義理人情でがんす!


「トウチャンのためなら、エンヤコラ〜 もひとつオマケに、エンヤコラ〜」
何故か、風炎オヤジの脳裏には、三輪明宏氏の「ヨイトマケの唄」が聞こえるのであります。

大阪高島屋 広島福屋 小倉総合展示場

芸人の晴れ舞台と、陶芸家の展示会は、同じかもしれませんが・・・
風炎オヤジの場合・・・ 拍手喝采も、アンコールも、祝儀もありまへんし、花も自分で調達いたします。


風炎窯の歴史は、15年程ですが、
広島福屋、大阪高島屋、小倉総合展示場・・・ ず〜っと続いております展示会が数ヶ所あります。

デパートの催事場の片隅であったり、小画廊であったり・・・ メッセ施設のブースであったり・・・
何万人もの集客がある場合もありますが、全てが風炎窯の御客様ではありまへん!

それでも、どの会場でも、毎年のように、顔を出して下さる御客様が、数名おられ、
芸能人の追っかけ程ではありませんが、ブコツ系の風炎オヤジにもFANがいて下さります。

ただ、ひたすら大感謝だす!


御客様にしてみれば、
いつもの作風、いつもの作品の中から、ほんの少しの新風を探してくださり、評価してくださるのですが・・・

作品の値段にそれほど、コダワッテおられる様子はありませんし、
ブコツ系の正直商売なのは、よく解ってくださいます。

恐らく、風炎作品に値段以上の価値を、見つけて下さっているのだと思いますし、
また買う事で、陶芸家を支え育てるという、志の高い方もおられます。


手作り陶器は、量産品に比べましたら高価です。
金持ちの道楽という見方もあるでしょうが・・・ 実際は慎ましい方が多い・・・


時々、沢山の人間国宝の作品を所有しておられる方に、出会いますが、
自慢話の末、風炎作品を求められる事は、まずありまへん!

愛する作品が、たまたま有名作家であったのなら、それはそれで、素晴らしいのですが・・・
作家としての地位と値段に、目が眩んでいる場合、チト不幸だす!

不景気で作品の評価額が下がったり・・・ ニセモノではないかと不安になったり・・・
作家が昇天したら、値上がりを期待したり・・・ 人の命までも、己の得に考えてしまうんですよね!


風炎作品のヒノキ舞台は、何といっても皆様の暮らしの中での、ささやかなワンシーン・・・
値段に振り回されない、自分なりの価値観、幸福観・・・ 見えない根ッコを掴んだ方のほうが、幸福だす!

舞台裏は、泥だらけの仕事場と、窯の炎なのですが・・・ 興味のある方は、工房へお越しくださいませ。



話は変わって・・・
仕事の合間を見ながら、時折、某歌手のコンサートに出かけておりますが・・・

昨年の夏の事・・・

あくまで偶然に、会場に早く着きましたので、3台分しかない無料駐車場をゲット!
あくまで偶然に、ひと気のない古い会場は、どこが入口で、どこがロビーかワケワカラン!

地方の会場は警備が無防備でがんす!


あくまで偶然に、一箇所ドアが開いておりましたので、珍入!
あくまで偶然に、ホールの扉の向こうは、バンドの音合わせの最中で、楽器の音が漏れる・・・


そ〜っと、扉の隙間から覘くと、ラテンパーカッションの種類の多さと、ミキサーのツマミの多さに驚く・・・
そ〜っと、扉を閉じて、2F席への階段を駆け上り、さらに奥深く珍入!

あくまで偶然に、関心しながら見学しておりますと・・・
あくまで偶然に、サングラスの御本人が登場され、照れる事なく本気で絶唱!


あくまで偶然に、観客はワシ独り・・・
あくまで偶然に、大感動!

照明、音響、舞台装置、スクリーン・・・ 立位置の確認、照明と影の確認、音響確認・・・
プロの仕事の緻密さに関心させられました。


途中、会場職員、スタッフ、プロモーターとすれ違いましたが・・・
ワシの人徳か、態度のデカさか、偶然か・・・
何のオトガメもなく・・・

ロビーのソファーで休んでおりますと、外には人が並び始め、プロモーターが怪訝な顔で聞く・・・
「職員の方ですか?」 「いえ、タダの客です。」
「どうしてここに?」 「偶然に・・・」
「チケットは?」 「ありまへん!」

「遠方から来て、早すぎたので、ここが待合所かと思い、昼寝しておりました。」
「すんまへんが、当日券をつか〜さい!」

あくまで偶然に、キャンセル空の中央5列をゲットして、真面目なプロの仕事を堪能させて頂き、
当たり前のように、素晴らしいコンサートは終了!


帰り道・・・

あくまで偶然に、通用口にいた巨漢のマネージャーにコーヒーカップを手渡し・・・
あくまで偶然に、手ブラでお帰りの某歌手&スタッフとすれ違い、ワゴン車は逃げるように走り去る・・・

思うに・・・

FANからの、抱えきれない花束とプレゼントは、ステージから何処へ消えたのでしょうか???
確かに独りで食べたり、エンヤコラ〜と運べる量ではありまへんが・・・

う〜ん!

プロの世界のウラのウラは、ボンビーな陶芸家には、不可解でがんす!

芸の道は奥深い・・・


PS

風炎オヤジの芸能好きは、母方の血統かもしれまへん!

幼い頃、広島駅近くの母方の実家へ、遊びに行きますと、
いつも祖母は、友人3〜4人と、仲良く輪になって、内職をしており、
その収入は、毎週のように行くヘルスセンターで、旅芸人一座(どさまわり)の芝居の花となる。

小銭をチリ紙に包んでヨジッタ、オヒネリをバラマキ・・・
割り箸に挟んだ千円札を、役者のムナモトに差したり・・・ 万札のレイ・・・
拍手喝采! 握手に抱擁!


それを見つめる4〜5歳の風炎コヤジは、染まり易い性格で、
公演の合間に、勝手に舞台に上がり、「どんぐりころころ」を唄い、拍手喝采と小銭を浴びた経験もある。

さらには、結構な追っかけの祖母に連れられて、旅役者の楽屋に宿泊した経験もあり、
白いプードルだけが友達で、学校にも行ってない、子役の少女がおり、何となく淋しそうでありました。


祖母は、ブチ逞しく、12人の子沢山!
悲惨な原爆でも、一人死んだだけですので、凄い生命力でがんす!
もう他界して15年以上になりますが、今頃になって奇妙な噂が、身内でされております。

子沢山のうちの一人は、追っかけした旅芸人との間に、生まれた子ではないかとか・・・
今となっては謎ですが・・・
追っかけても、御本人たちは皆天国ですので、遺伝子鑑定もできまへん!


それ程、芝居好きであったという笑い話なのですが・・・
万一、それが本当であれば、祖母の追っかけとしての実力は、偉大だす!

う〜ん!

人の道も奥深い・・・






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