VOL・104  喫茶   
2005/3

魚紋カップ 夢雲窯

暖冬とはいえ、やはり冬は寒いのが当たり前!

違いの解る陶芸家が作った、丸くて大きなマグカップを両手で囲み・・・
吐息を吹きかけ、カホリ高い、ブラックコーヒーを飲めば・・・ 身も心も、温泉マークのように温まる・・・
粉雪舞う、寒い日は、なおさら・・・

思うに・・・
喫茶は、癒しであり、人の世の潤滑油として欠かせないものでがんす!
それは、クラフトの存在意義にも似ている・・・
忙し過ぎる時代なら、なおさら・・・

コーヒー、紅茶、日本茶、中国茶、抹茶・・・
作る器として、陶芸家にとって深いかかわりがあるのですが・・・

さらに、商いの手法としても重要なアイテムであると、最近気が付いたのであります。


クラフトマンもイロイロで・・・
福岡の筑豊に、一人の木工家が生息されておられます。

丘の上に建つ、工房&ギャラリーは、木造校舎をイメ〜ジした作りで、大きくて綺麗・・・
木のカホリがするギャラリーは、寄木の小物が、楽しく展示してあり・・・
その奥には喫茶コーナーがあり、作家自ら紅茶を入れ、お客様との会話が弾む・・・

「お客さんにお茶を出して、長話をして、何時仕事をされるんですか?」
「主に早朝と深夜に集中して創作して、午後はダラダラと接客する事が多いですね。」
「主婦は日常から離れるために工房を訪れる方が多く、作家がホストのような事をすれば感動する訳ですね。」

う〜ん! なるへそ!

この木工家は包容力のある優しい方なのですが、
イベント企画、書籍出版、デザイナーと、マルチな才能をお持ちで、
人望も厚く、大変マメで、ブチ尊敬しております。


クラフトマンもイロイロで・・・
広島の西条に、一人の女流陶芸家が生息されておられます。

田園地帯の、工房&ギャラリーは、農家の離れを改装されたもので、小さくてコジンマリ・・・
和室のギャラリーは、陶人形の小物が、楽しく展示してあり・・・
座卓を囲んで日本茶が出され、女性独特のカシマシイ会話の花が咲く・・・

「お客さんにお茶をだして、長話をして、何時仕事をされるんですか?」
「土日は接客の日と決めていますので、朝からお茶とお菓子の準備をしてるんですよ。」

出されたお茶のテーブルセッテングにはおおたまげ!
30cm四方の大皿や長皿に、山野草や小石が盛られ、湯呑と和菓子が隠れるよに添えてある。

「ここまでされますと買わずに帰れませんが、これも作戦ですか?」
「それもありますが、元来、パフォーマンスが好きなんですよ。」
「この陶人形の絵葉書もオマケなんですよ。」

う〜ん! なるへそ!

この女流陶芸家は、趣味が高じて陶人形作家の道を歩まれておられますが、
細やかな表情と、炭化した風合いと、和のテイストは素晴らしく・・・
企画のキャリアがあり、そのパフォーマンスには、ブチ敬服しております。


クラフトギャラリーもイロイロで・・・
鹿児島の郊外に、大きな自宅の空き部屋を利用したユニークなギャラリーがあります。
木金土しか営業しないのですが・・・

「正月でも、盆でも、決めた曜日は必ず開店してます。」
「それと、お茶は必ずお出ししますが、自家製の甘い漬物も出します。」

風炎カ〜サンも、ゴーヤの甘い漬物を伝授され、自宅でマネして作りましたが・・・
あの味には程遠い・・・


クラフトギャラリーもイロイロで・・・
広島市の中区に、開窯当時からお付き合いのあります女性オーナーが、新店舗をOPENされました。

ビル1Fの店舗は高級感が漂い・・・ シンプルでハイソな作品が多く・・・ オーナーのセンスが光る!
レジの横に小さな喫茶コーナーがあり、いつも賑やかでがんす!

「お客さんにお茶をだして、長話をして、何時商売をされるんですか?」
「お茶を出して売ろうとしてもダメですよ!」
「ワイワイガヤガヤしてるうちに、弾みでポロッと売れるんですよね。」
「商売とは難しいものですよ。」

う〜ん! なるへそ!

「商売は人なり」とは、よく言ったもので・・・ 細やかな気配りと会話には、ブチ敬服しております。


デパートもイロイロで・・・
なんば高島屋のブランド品の並ぶフロアの片隅に、一般客の入れない喫茶ルームがある。
一般人の年収程の買い物をされる、ゴールドカードのお客様専用の待合所なのですが・・・

マネージャーいわく・・・
「ゴールドのお客様がいらしたらスグ教えてくださいね!」
「私共で大切に接客いたしますので・・・」

風炎カ〜サンは朝礼で接客研修を受けているのですが、風炎オヤジの接客はヤバイと思われているらしく・・・
デパートにすれば、それは妥当な判断だす!

金持ちほどワガママなもので、怒らせると怖い・・・

汚い社員専用の喫煙所で、80円の自販機のコーヒーを飲み、疲れた足を揉みながら・・・
ボンビーな苦味を噛み締めるのだす!


思うに・・・
酒と喫煙は、不健康と税金の源ではありますが、精神面での効用は無きにしもあらずで、
人間とは、弱い生きものなのかもしれまへん!


人は見かけによらず・・・
ワシは甘党で、酒は少ししか飲めませんし、喫煙も辞めて20年になります。

楽しみと言えば、音楽とコーヒーなのですが・・・
工房では、某歌手の歌声がシングルリピートで、シツコク流れ・・・
濃い目のブラックモカを、日に4〜5杯は飲む・・・

中途半端な陶芸家の暮らしは、ある意味、お気楽な暮らしなのかもしれまへん!

工房入口 ギャラリー 無骨者

話はかわって・・・

工房の近くの中国自動車道の加計高速BSに、「ETCスマートインター」が新設されましたが、
広島方向のみで、九州方向からの利用はできまへん!
普通車で、ETCカードのみ通行できます。

お客様におかれましては、チト不便な事で、国土交通省に変わりましてお詫びいたします。


ETCゲートから坂を下るとR191に突き当たる・・・ 右折すると、自然に加計バイパスにつながる・・・
道沿いには、ツブれた喫茶店がチラホラ・・・

2分も走ると・・・
ツブれそうでツブれない、風炎窯の電柱の看板があり、青い幟旗が風に揺れている・・・
小さなログハウスの前に車を止めて、殺風景な工房の引戸を開ければ、展示室となっております。


不定休で、人気もなく、乱雑で、薄暗いのですが、セルフで照明のスイッチを入れればライトアップ!
されど、作品はホコリにまみれ、整理整頓、衛生管理は悪い・・・

お客様におかれましては、チト不潔な事で、保健所に変わりましてお詫びいたします。


恐る恐る奥を覗けば・・・
ロクロ場と作業場と窯があり、粘土のカホリがする・・・
無骨で巨漢で不精ヒゲでザンバラウスラで、アヤシイ陶芸家にジロリと睨まれ・・・

「もし用事があったら、呼んでつか〜さい!」と、低い声で適当にあしらわれ、手は粘土に向っている。

隣の自宅に隠れている場合・・・
「勝手にどうぞ!もし用事があったら、チャイムを押してつか〜さい!」と、玄関から顔を出して命令する。

お客様におかれましては、チト無骨な事で、組事務所に変わりましてお詫びいたします。


ゴク稀ですが・・・
会話の弾む事があるのですが、常連さんの顔は解っても、名前や職業は覚えられずにトンチンカン!
陶芸家にしてみれば、無骨は、ボケ隠しと考えているフシある・・・

お茶でも出そうものなら・・・
タダより怖い、押売りの脅迫! 逃げ帰るお客様も多いだす!
陶芸家にしてみれば、客へのホッタラカシも、思いやりと考えているフシがある・・・

勇気を出して、値切ろうものなら・・・
「以前買って下さったお客様に申し訳ありませんので、値引きはしまへん!」
「消費税は頂いておりませんのでアシカラズ・・・」
「工房イベントで、たまにB級品を販売する事があり、お知らせ致しますのでご署名くださいませ。」

タカビーなのか、セコイのか、我ながらワケワカラン!

お客様におかれましては、チト不明朗な事で、税務署に変わりましてお詫びいたします。


振り向けば・・・
楽しいはずの土遊びも、仕事となれば結構厳しく・・・
パソコンは、趣味のようでも、仕事のような義務感があり・・・
ヘルニアの腰の調子が悪ければ、表情はさらに暗い・・・


ヘンテコ陶器の奥底には、真実の愛が潜んでいると自画自賛しておりますが・・・
接客サービスの通信簿は、見事な赤点でがんす!

怖い顔に似合わず、謙虚で、スグ反省するタイプなのですが、
無骨な傾向は、残念ながらボケルに任せ、死ぬまで変りそうもない・・・

お客様におかれましては、これから先も不愉快な事で、申し訳ございません!


車でのお帰りは、新設されたETCスマートインターが、広島方向にはブチ便利で、
西風新都経由、己斐トンネル経由ですと、市内まで30分と近くなりました。

風炎オヤジの悪口でも言いながら・・・ 楽しく愉快にお帰りくださいませ。


自宅展 居間 吉水園

話は続いて・・・

無骨なくせにイベント好きで、「風炎フェスタ」やら、「太田川クラフトフェスタ」やら、「新春フェスタ」やら、
お客様を、数々の災難に巻き込み・・・

企画力の不足やら、不景気やら、台風やら、ドカ雪やら、駐車場不足やら、トイレ不足やら、
出展くださった工房までも、数々の災難に巻き込み・・・

ドタバタと忙しいくせに、未だに懲りず、主催者だけが夢見る幸せ者だす!


昨年の11月に、太田川流域の5会場を繋いで、クラフトフェスタをプレ開催しましたが、
ポイントラリー&アンケートも機能せず、一日の周遊にしては距離があり過ぎ、
反省会ばかりが、大盛況でがんす!


プレ開催という事で、風炎会場では他工房の出展はなく、ゆったり、のんびり・・・
初めて自宅を開放して作品の展示をしました。

玄関には、沖縄時代に蒐集した陶器の展示・・・ 
座卓には小物を並べて、「独り言」や陶芸雑誌を置き・・・
地元の隠れ名物のチーズスフレに、風炎カップに入れたコーヒー・・・
スピーカーから流れるのは、某歌手のJAZZYなささやき・・・


まあ〜その〜

何より凄いのが、風炎オヤジの大話・・・
その時くらい、お客様とゆっくり大話が出来たのも、初めての経験でがんす!

お客様におかれましては、狭い部屋の座卓で、巨漢なワシと面と向って、お茶を飲まされる訳で・・・
帰ろうにも帰れない恐ろしい状況・・・

お客様の顔は解れど、名前&職業&住所はトンチンカンでしたが、
解った振りをしながら、会話は続く・・・


JAPANの政治批判&教育批判&美術団体批判&医療批判&公務員批判&金権批判・・・
一人で好き勝手に喋りまくったのはいいのですが・・・

市会議員、町会議員、公務員、医者、教師、講師、会社役員、自営、主婦・・・
お客様の職業もイロイロで、社会的地位のある方も多い・・・

う〜ん!

いらん事を喋り過ぎて、大失敗している気がしなくもない・・・


今年6月の「太田川クラフトフェスタ」でも、自宅茶会を開きたいのですが、
会話にプレはありまへんので、ブチクソ注意!

カフェイン&タンニン&カテキンに、現在進行中のボケの防止効果を期待しるしかありまへん!


PS

洒落た料亭で、小さな花器を兼ねた箸置きを、よく見かけるのですが・・・
小さな山野草が活けてある場合が多い・・・

女性らしい、さり気ない心ずかいでがんす!

女流陶芸家の作品である場合がほとんどで、もし男が作っていたら、気持ち悪い・・・
巨漢で、無骨で、ウスラな場合・・・ さらに気持ち悪い・・・

当然、風炎オヤジが介入できる分野ではない・・・


茶道人口は減少の一途ですが、新しい接待のカタチが芽生えているのかもしれまへん!

中年になって初めて、喫茶の効用を知らされ、
さりげない接客も、癒しも、パフォーマンスも、茶道のような奥深さがあると悟る!

う〜ん!

激しい葛藤の末・・・ 2005年春、小さな愛の物語が生まれたのでありました。

(箸置の画像の掲載予定)


PS 2

工房のある加計地区は、浅野藩の御用茶の産地としての歴史があり、有名だったらしいのですが・・・
現在、茶畑は見かけなくなってしまいました。

学校給食のお茶は、太田川の中州の茶畑で、児童自ら摘んでおりましたが・・・
子供の作業は乱雑で、摘むというより、ムシリ取る状態でしたので、美味しいカホリはしない・・・
さらに給食の、凹んだアルミのカップが、味気ない・・・

お茶が美味しい土地柄とは、幼少期からの経験からしても、想像できませんでした。


地域の長老が取り仕切り・・・
昔ながらの製法での茶会があり、飲ませて頂いたのですが、これがおおたまげ!

新芽の上から3枚だけを摘み・・・ 微妙な火加減の釜で炒り・・・ 手で揉みまくる・・・
一番茶、二番茶、三番茶・・・ 微妙に変わる深い味わい・・・

ペットボトル、自販機、コンビニ・・・ 便利過ぎる時代に埋もれて、消えてしまった文化があるのだ!


手間隙と生産コストを考えれば、現代の流通に乗れる商品ではありまへん!
インターネットで売ればいいような気もしますが・・・ 注文が来ても困るんでしょうね。


太田川の護岸も整備され・・・ 町民は高齢化でボケルに任せ・・・
中州も、茶畑も、吊橋も、川船も、石垣も・・・ その記憶さえも、やがて消えてゆくのかもしれまへん!

出がらし茶のように・・・






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