VOL・89  達磨   
2003/12

雪花山房 もりそば

風炎工房の隣町の豊平町は、そばの里としての「村おこし」が盛んで、すでに立派に定着しております。

大山奥で、月のうち数日しか開かない、そば屋・・・ 
仙人のような「そば打ち職人」がおるらしい・・・
噂には聞いておりましたが、先日やっと食べられる機会に恵まれました。

田舎道を走りますと、田んぼのあぜ道に、「
達磨」と書かれた、傾いた小さな道標が数枚あるだけ・・・
ぐにゃぐにゃの坂道を登り、集落も消え、りんご園や竹やぶの山道を抜けますと、それらしき平屋の店を発見!

看板も暖簾もなく、シンプル&シンメトリーな建物は、ただならぬ雰囲気・・・ 美術館のようでもある。
TV取材中らしい・・・ 県外ナンバーの車もチラホラ・・・ 大田舎の
ドン詰まりなのに、御客様は多い。

20席程の小さな店で、メニューは「盛そば」のみ・・・ 1枚、¥700なり!


実は、この店と主人は何者なのか、インターネットで調査してはおりました。

八ヶ岳山麓の「翁そば」は、そば通の間では超有名店で、「翁詣」という言葉があるほどで、
東京から中央道を飛ばし・・・ 数時間も待って・・・ やっと食べれるとか・・・

自家製蕎麦栽培・・・ 石臼・・・ 手打ち・・・ 水・・・ 醤油・・・ みりん・・・ 昆布・・・ わさび・・・ 
とにかくコダワリまくる。

コダワリ
手打ち麺は体力勝負! ある年齢を越えられますと、大繁盛は考えものでがんす!
「翁」は、弟子に譲り、縁あって広島の山奥に移ってこられたとか・・・


月に数日のみ! 11時から2時までの開店! 売切れ御免!

あとは・・・ 後進の指導をされたり・・・ そばの里を目指す地元の指導・・・ 全国のイベントとか・・・
マイペースで仙人のような生活をされているとの事だす!


「達磨」の店主は、肌の色艶はいいのですが、そばの打ち過ぎで、が傾いて曲がっておられ、
偏屈をイメ〜ジしてしまいますが、結構気さくな方で、ウンチク話しは面白いだす!

仕事への
姿勢が、達磨のような風貌と、丸い腰に滲み出ているようで、
ヘルニアで静養中の風炎オヤジと致しましても、考えさせられる事は多い・・・


風炎オヤジは、ざるソバは好きでがんす!

出雲そばとか、信濃そばとか・・・ いわゆる、黒くてソバガラたっぷりの田舎風が、好みなのですが・・・ 
通ではありまへん!

こちらの麺は、更科ほどではありませんが、わりと白く、均一で細長く、コシもあって、スルスルと喉越しが壮快!
真剣に味わいましたが、微妙な風味! マズくはありまへんが、正直、良くワカラン!

こういう蕎麦は、初体験でがんす!


隣の御客様は、遠方から高速を飛ばして来られたようで、大満足されておられましたので、
食通には素晴らしい味らしい。


ネット調査によりますと、そば店は・・・

時候に合わせて、全国各地の新鮮なソバ粉を、選択しているとか・・・ 
田舎でも、都会でも、何処でも、大切なのは
とか・・・
香り高い新ソバは、緑がかった色だそうで、滅多に御目にかかれぬとか・・・

喉ごしには、均一な切りが大切で、ヘタな手打ちより、製麺機のほうがいいとか・・・
打ってすぐより、20〜30分寝かすほうがいいとか・・・
一口めは、麺のみ食し、風味を楽しみ・・・ 薬味はツユに漬けず、麺に乗せ・・・ ツユの付け過ぎは禁物とか・・・

ソバ粉の状態、水や塩の
アンバイ、天候、気分・・・ 毎回、違う味で同じにはならないとか・・・
頑固一徹、味を守り通すというよりも・・・ 微妙な
季節の移ろいを感じるもののようで・・・ 奥深い世界・・・

「来週から
新ソバになります。」

店主の言葉に送られて、土産に乾麺セットを買って、山道を下ってゆきました。

■HPはこちら

こねる そば祭り 切る


11月中旬に、豊平で「そば祭り」が開催され、多くの出店やイベントで、大賑わい!

いつもこの時期は、大阪での展示会なのですが・・・ 
今年はヘルニアで1回休みさせて頂けましたので、出かけてみました。

「新ソバ」という言葉が、気になっていたもので・・・

農産物も、神楽も、大道芸も、テキ屋のテントにも、目もくれず・・・ そば打ちブースへ一直線!

人だかり・・・ ナント・・・ 達磨の御主人と、お弟子さん達が、テントで
実演されておりました!

自分の技を、企業秘密と称して、隠す風潮が多い中・・・ 悟られた方は、器が大きいんだなあ〜と、妙に感心・・・
じっ〜〜〜〜と、アイフルな視線で、しばし見惚れておりました。

陶芸家の作業と似ており・・・  手際よく、無駄のない動きは当然だす!

お弟子さんのソバ粉をコネル手際は、粘土の菊モミにも似ており・・・ 
師匠がソバ玉を麺棒で伸ばしてゆくと、四角っぽいカタチ・・・
粉を振りながら、畳んで、重ねて、切る! リズミカルで均一!

最後に、多少の切りカスが出る!

そのカスが、次のソバ粉に混ざり、またコネル・・・ 無駄なし。
お弟子さんが混ぜる時、ほんのカスカに、カスが飛んで、地面にポトリ・・・
兄弟子らしき人に、
モッタイナイと、小言を言われる。

なるへそ!

話しはかわって・・・

風炎窯は現在、6種の釉薬と、5種の絵具、2種の色化粧土・・・ 
粘土や、灰や、土石や、鉱物を、
自家調合しております。
貰ったり、買ったり、拾ったりした材料でがんす!

その暗号のような釉薬調合表は、工房のよく見える所に貼ってある。 何故なら、ボケて間違えたら一大事!
企業秘密ではありまへんが、尋ねる人も無し・・・

その調合されたバケツを洗った後の、洗い水を貯めるバケツもあり、
沈殿させて再利用・・・ 
ムダに釉薬を捨てる事はない。

陶土は、石見の江津の赤土と、信楽土をブレンド・・・ 真空土練機で、自家調合しております。

そして、菊モミ・・・ 一応、汗ダク!

ロクロ引きして、乾燥して、高台を削りますと粘土カスが出る・・・
それを集めて再利用するのですが・・・ 人件費を考えますと、買ったほうが
安いのですが、出来まへん!

真空土練機も無かった倉敷修行時代・・・ 粘土は水簸し・・・ 寝かせ・・・ 足踏みして、手揉み・・・
モミ灰は、石臼を回りながら・・・ 木槌でつぶす・・・ 1週間やって、バケツ一杯くらいの量・・・

その頃の、
染み付いた価値観は、変えられまへん! ボケルとなおさら・・・

そば打ち風景を眺めておりますと、「石の上にも3年」と、自分に言い聞かせながら、
頑張っていた倉敷時代を思い出しました。


包丁の先を、真剣に眺めておりますと・・・ ブチ腹減った!
ふと気が付けば・・・ 2時前なのに、本日売切れ! オーダーストップ!

う〜ん! 残念無念! 他の御客様も、アキラメテ帰った様子・・・

しかたなく、そば打ち作業の後片付けを、シブトク見学・・・ 
そば打ち指南ビデオも映されておりましたので、シブトク見学!

すると、あと少し食べれるとか・・・ 達磨さんが申す! 
長蛇の列に並ぶ事なく、ありつけてしまいました。
それも2枚も・・・ 「残り物には福がある」とはこの事か・・・ う〜ん! 旨い!

ラッキー! 
緑色がかった新ソバでがんす! 先日のに比べますと、確かにカホリ高いだす!
ソバ湯も飲み放題で、大量ルチンで、ルンルンでがんす!

ワシが最後の福だと満喫しておりますと、最後のソバ玉の最後の切りカスを、ある紳士が貰っておった!
ソバガキにでもするらしい・・・

う〜ん!

最後の最後で、最後の
切りカスに、負けてしも〜た!

それにしても・・・ 手打ちソバの奥深い暖簾を、くぐり抜けたようでもある・・・ 新ソバの微妙なカホリでした。


PS

風炎オヤジは育ちが悪いですので、
食事の作法についてはブコツだす!

結婚式のフランス料理は苦手で、フォークの置き方くらいしか知りまへん・・・ ナプキンは似合わない・・・
4〜5回は、茶の湯の教室に通い、箸の上げ下ろしくらいは習いましたが、これも似合わない!

高級ホテルでサンドイッチを御馳走になりましたら、デザートに葡萄が出た!
ボールに水が張ってあり・・・ どうやら一粒づつ、洗って食べるらしい・・・ 面倒くさい・・・

その点、ざるソバや、ラーメンや、うどんは、いい!

ズルズルと豪快に、飛び散る汁と喉ごしは、ストレス発散にもなる!
う〜ん! やはり、本格派の
B級なのね!


PS 2

」という漢字・・・ 恥ずかしながら読めず・・・ 漢検2級の風炎キッズに聞いてみた。
ハハと笑われ、オキナ! 意味は、お爺さんと申す!

そば打ち実演のTシャツは、ダルマのデザインで、「翁から達磨へ」と書いてありました。

達磨法師は、「石の上に8年」も座り続けて、悟りを開かれたとか・・・

「達磨」の御主人は、ある
年齢を越えられ・・・ 山梨から広島に移住され・・・ 
現在のような
後進を育てる生き方に、方向転換されたようです。

上手な年輪の重ね方には、ブチクソ敬服いたします!

今年の風炎工房は・・・ 新春フェスタでドカ雪! 風炎フェスタで台風! 椎間板ヘルニアで入院! 
いい年ではありまへんでした。

これまで、若さに任せ
ガムシャラに仕事しいていた風炎オヤジ・・・ 
ある意味、転換期を迎えているのかもしれまへん!

陶芸家は、立派な肉体労働サービス業であり・・・ 限りある肉体との、上手な付き合い方を模索しております。
達磨の御主人の生き様は、参考にさせて頂く事が、山のようだす!

今年の、最後の最後の年越しは・・・ 先日買った、翁のコダワリの乾麺を茹でながら、新年を迎えます。
有難う御座いました!






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