VOL・88  さよなら可部線   
2003/12

C11 三段峡駅

秋の行楽シーズンも終わり、紅葉も終わり、11月末でJR可部線の、可部〜三段峡間の歴史が終わってしも〜た!

車の普及、田舎の過疎化、国鉄の民営化・・・
多くの問題を残しながら、時代の波に呑まれるように、その役目を終えてゆきました。


紅葉も終わろうとしていた晩秋、最後の思い出に、三段峡まで乗車しました。
たくさんの人で溢れ・・・ 首には
デジカメ、線路脇にはカメラ小僧もチラホラ・・・ 上空には、取材ヘリコプターも・・・

平日の乗客は、中年の方ばかりで・・・ その胸には、「
のすたるぢや」な風景が、刻まれているのでしょうか?


ワシが生まれた時には、すでに蒸気機関車が黒煙を上げ、走っておりました。

当時、加計駅には売店があり、菓子を買ってもらい、広島駅までの小旅行は、子供には楽しいものでした。

バスに比べて
、揺れも少なく、快適なのですが・・・ 残念ながら遅い・・・ 広島駅まで約2時間。
忙しい現代生活では、
通勤通学にはチト苦しい・・・
現在、高速バスは広島中心部まで60分程で運行しており、便利でがんす!


ゴトゴトゴトゴトゴトゴト・・・ 久し振りに揺られ・・・ 移ろう秋に、もの思う。

車は確かに便利ですが、運転は忙しい・・・ 運転中は、車窓の風景を楽しむ
余裕はない。
歩行者注意! 信号注意! 踏みきり注意! 追い越し注意! 追突注意! 落石注意! イノシシ注意!
急カーブが多いですので、たまに川に落ちる・・・

可部線は確かに不便ですが、心に余裕がある・・・ とにかくヒマ!
駅での待ち時間! 駅から降りて、さらに移動! 夏暑く、冬寒い! スピード遅い!
呑みすぎて、寝過ごして、たまに乗り越す・・・ 


広がる車窓の風景は・・・ 急峻な山々と、それを縫うように流れる太田川・・・ 
デコボコのコントラストが美しい!
対座のシートに座りますと、自然と会話の花が咲く。

車で見慣れた日常の風景も、視線が変われば、結構、新鮮なものでした。


車窓からの風景


時代の流れとはいえ・・・ あるものが無くなるのは、沿線地域としては、淋しいものでがんす!

地域住民の
存続運動も繰り広げられましたが、力尽き・・・ 第3セクターの話しがありますが、財政難で難しい・・・
これから、JRや民間のバス便が増発されますが・・・ それで過疎化は止まりまへん!

赤字となり、減便されるのも時間の問題・・・ 自治体の運営するフリーバスも、補助金のタレナガシで財政悪化・・・


現在でも、老人の通院は・・・ 駅やバス停での待ち時間と、病院での待ち時間と、帰りの待ち時間・・・
病院への往復で、残り少ない
生存時間の多くが奪われており・・・

病院で顔を合わせるのが、元気な証しのようでもある。


児童・生徒の通学にも多大な影響があり・・・ バス通学になりますと、定期運賃は大幅増となります。
60%が可部線通学で、定員割れの続く県立加計高校も、存続の危機にさらされます。


旧国鉄時代の廃止は、地域自治体との協議が必要で、一方的には出来ませんでした。

民営化時に、原則自由となり・・・ 法律改正後、始めての廃止問題は、全国の注目を集めました。
これから先、同じ状況にある過疎地の鉄道に波及する事は、必至であります。


小泉総理は民営化がスローガンですが・・・ 営利ばかり、競争ばかりでは忙しくなるばかりだす!
激しい競争原理は、ブチクソ
貧富の差を加速させ・・・ それが本当の幸福なのでしょうか?

地方に出来る事は、地方にと申しますが・・・
ボンビー自治体が合併して、公務員や議員が多少リストラされて、何が変わるのでしょうか?


東京都内の小金井街道の、
アカズの踏切り騒動を見ておりますと、
可部線との対極のようで、考えさせられるものだす!

都市に人口集中するのは、自然の摂理かもしれませんが・・・
都市の過密化も、田舎の過疎化も、行き過ぎは大問題でがんす!
自由競争と、弱者への福祉が、バランス良く
共存して欲しいものですね。


これから時代を動かすものは、
民営化よりも、合併よりも、複雑になりすぎた政治制度や官僚制度の疲弊の改革であり、
何よりも、
銭と物欲に振りまわされている、現代人の暮らしの見直しでがんす!


可部線問題は、JAPANの歪の縮図であり、公共交通を単なる利潤の術と取るか、社会資本と取るかで、
方向は大きく変わります。

国やJRも、この問題の根深さに、軟化の姿勢も見せているようにも、聞いております。
廃止のち再生された路線もあるらしいですが、過疎地のボンビー自治体には、苦しい話ではあります。


世の中、確かに銭は大切ですが、ただそれだけでは悲しい・・・

風炎陶器には値段があり・・・ このコラムを読むにも通信費が発生しておりますが・・・
風炎オヤジといたしましては、銭を越えた領域で、幸福を感じて頂けますように、
さらなる精進を重ねるしかありまへん!


残念ながら、可部線は
廃止されますが・・・
これからが過疎問題を掘り下げるスタート
でもあり、引き続き論議される事でしょう。


話しは変わりますが・・・

風炎オヤジは徒歩通学でしたので、可部線に乗った想い出よりも、
見つめられた想い出が多いだす!

小学校時代は、可部線の沿線で、見晴らしがいい家に住んでいたのですが、
当時、オネショが大好きで、濡れ布団が2階の窓から屋根に干される事が、しばしば・・・

列車の窓から遥かに見えたであろう、見事な
世界地図・・・ 学校で友人からカラカワレ、噂になった事もあるだす!

今に思えば・・・ 繊細&ナイーブな性格は、この頃に養われたのかもしれまへん!



高校時代に越した家は、可部線の土手の下で・・・ 窓を開ければ、
整理整頓の悪い、ワシの部屋が丸見え。
さらには、加計高校への通学歩道と、線路は、並行して走っておりました。

遅刻の常習犯でしたので、毎朝、ギリギリまで寝て、約2km、走って登校しておりますた。
途中、追い越されるジーゼルカー・・・ 「お〜い!遅刻するぞ〜」と、クラスメイトが車窓から手を振ったりして・・・
目立つ存在。

今に思えば・・・ 大胆&中途半端な性格は、この頃に養われたのかもしれまへん!


あれから四半世紀・・・ 立派な中年オヤジになってしまいました。

う〜ん!

人は誰も
に出て、人は誰も故郷を振り返る・・・
ちょっぴり淋しくて振り返っても、そこには、ただ風が吹いているだけ・・・

残された、鉄路と枕木と鉄橋と無人駅・・・ 今日も、ヘルニア予防のウォーキングをしながら、眺めております。

黄色いジーゼルカーの走る風景は、風炎オヤジの胸の奥で「のすたるぢや」へと昇華!

 日本の過去と、未来と、時の流れの儚さが・・・ シミル。


PS 1

可部線にまつわる、
心象風景など・・・ イロイロ・・・

※冬の朝、始発の車窓から見えた、紺碧の空と朝焼けが混ざる、美しい瞬間!

※毛糸のマフラーと、手ぶくろと、暖房された車内・・・ 車窓の川面は白く凍り、湯気のような水蒸気!


※暑い夏は、蒸気機関車の窓を開け、風に吹かれ・・・ トンネルでは、
モコモコの黒煙で鼻を塞ぐ・・・
 慌てて窓を下げたら、車窓で遊んでいたグリコのオマケが、飛んで消えた!

※走りながら
揺れるトイレは難しい・・・ 穴を覗けば、敷石・・・ 線路へのタレナガシだった!

※加計駅の石炭置き場で、カクレンボして、パンツが真っ黒になって叱られた! どんな遊びか?

※ワルガキが、木坂トンネル内でヤキイモ焼いて、煙モコモコ・・・ 線路に
爆竹並べたり・・・ 警察に通報された!

※対座シートの正面で、赤子に
母乳を与える若い母親・・・
  あらわなボインに、チト興奮・・・ オシメも変えて、漂うカホリ!

※アンパン食べていると恥ずかしい・・・ ワシの口を、じ〜〜っと見つめる3才児。

※「待ってくれ〜」 山野辺を手を振りながら走る、朝の通勤客!
  動き始めておったのに、バックして待つジーゼルカー・・・ 怒る人なし・・・

※対座シートの正面で微笑んでいるのは、憧れのマドンナ! 脂汗の会話と、触れる膝! 長い時間・・・


PS 2

廃止問題が表面化してから、沿線にはカメラ小僧がチラホラ・・・
三脚立てて、シャッターチャンスを狙い、何時間も
潜伏しているアヤシイ光景もチラホラ・・・

当時、小学生の風炎キッズ達は、登下校の際、変なオジサンには気を付けるように、学校から指導されていたようで、
「可部線マニア」は、彼女らにとってあまりいい印象ではなかった。


先日、「デジタルカベセン」という
写真集が発刊され、一冊購入したのですが・・・ ブチクソ素晴らしい!
デジタル処理されてるとはいえ美しい画像であり、見慣れた風景の良さを、再認識しますた。

キッズ達もエラク感動したようで、「マニア」への印象も変化したようだす! 五冊追加注文しました。

■HPはこちら


PS 3

三段峡駅には蒸気機関車が展示されており、機関室にも座れます。

パイプ、メーター、石炭ボイラー、小さな窓、レバー・・・ メカニカルに露出した雰囲気は、戦車や潜水艦のようでもある。

日本に鉄道が敷かれたのは明治以降で、政府は西洋化と植民地政策に奔放し、
軍国主義に走った!
蒸気機関車は、ある意味、その時代の象徴なのかもしれまへん!


風炎オヤジのオヤジは、戦時下、中国に渡り・・・ 満州鉄道の工事・・・
終戦後、可部線の工事で加計町に流れついたとか・・・ 
ゆえに、可部線がないと、ワシはこの世に存在していないのだす!


そういえば、駅員さんや車掌さんの制服制帽も、軍服のようで、戦争のカホリがするだす!

詰襟のガクランと桜ボタン、セーラー服、セビロ、警察・消防の制服・・・ 戦争のカホリがしなくもない。
コンピューター、インターネット、カーナビ、人工衛星・・・ これらも、軍事技術の福産物とか・・・

進歩と革新は、平和と不幸のイタバサミの側面がある。


石炭はガソリンに変わり・・・ 水力発電から原子力に変わり・・・ 中国山地の木材需要も外材に変わり・・・
思えば、可部線を取り巻く環境も、すっかり変わってしまったのかもしれまへん!

こらからは
環境問題が重要で、さらなる大変革を迎えるだす!

う〜ん!

可部線が廃止されるのならば・・・ せめて、これからの
平和な時代への架け橋となりますように・・・

合掌!







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