秘密
風炎オヤジ、23歳の春、沖縄へと旅立ちました。
親のスネをかじって、買って貰った軽四、赤いダイハツ・ミラに一杯の荷物。
その上、ルーフキャリアにも山盛り荷物で、ブルーシートを被せ鹿児島へ向かいました。
知り合いもなく、ガイドブックだけが頼りの旅立ちでした。
萩・九州と、窯場を見学しながらの旅でした。
途中、高速でパトカーに止められ、荷物がおっこちないかと検査されました。
別に悪い事もしてないし、秘密もないので、無事パスでした。
鹿児島で色絵磁器で有名な、陳壽官工房を、訪れました。
薩摩藩の御用窯で、緻密で絢爛豪華な金襴手の半磁器でした。
初代は朝鮮から招聘され、その技術、技法は当時の先端技術であり
藩によって厳重に管理され、今でいう企業秘密でありました。
風炎オヤジは、その長身を生かして、首を伸ばして、
工房の絵付け風景を覗いておりましたところ
品のいい御婦人が出てこられ、軽く会釈をされ、
開け放たれていた内障子を閉められました。
う〜ん・・・
藩窯という事情を考えると当然ではありますが、多少、違和感が残りました。
一方で薩摩には「黒もん」と呼ばれる、黒一色の民芸陶器がありました。
佐太郎窯という工房を訪ねました。
おおたまげ!
なんと、夫婦喧嘩の真っ最中でした。エキサイトしておりました。
しかし、鹿児島の方言は解りません。英語のほうがまだ解ります。
広島の方言もキツイですが、鹿児島も、なかなかでありました。
陶土、釉薬、窯変のサンプル・・・
工房の二階に、一般開放の、手づくり資料室がありました。
登り窯の脇では、釉薬掛けの最中で、
釉薬の調合を、聞きもしないのに教えて頂きました。
桜島の、火山灰が堆積した、シラス台地の土を、そのまま溶かしたら黒釉薬。
調合なんてありません!
実にシンプルで単純。フルイの番目まで教えて頂きました。
こちらの工房は秘密どころかフルオープンで、夫婦喧嘩まで見せて頂きました。
焼き物屋も、いろいろあるんだなあ〜と、桜島を眺めながら、
鹿児島港からフェリーで沖縄へ向かいました。
今、まさに船出の時・・・出航!
デッキから陸を眺め、感傷にふけっておりますと、岸壁に見慣れた赤いミラが・・・
慌てて船員に伝えると、ナント、バック・・・
思うに、あれがズッコケ珍道中の始まりだったのか・・・
(あまりに早くついた為、港に車を預けて、天文館へ遊びに行ったのが間違いでした。)
20年の時の流れ!遠景の桜島が・・セピアに消えた! |